11月26日(日)11月27日(月)

11月26日(日)

タイトル:リスクガバナンス ~大規模災害を乗り切る~
主催団体:内閣府政策統括官(防災担当)

【スピーカーの主な発言】

■越村俊一氏
 東日本大震災での甚大な被害を受け、我が国では津波数値シミュレーションなどの「予測技術」を用いて、発災時の被害を軽減するための対策を行っている。 一方、津波に限らず、災害発生時の対応行動は全て「被害の把握」を基に行われるものであるため、発災後の被害を最小限に食い止めるためには、被害状況の迅速な把握を行う「把握技術」が必要不可欠である。以上より、災害リスクの軽減には「予測技術」と、「把握技術」の両輪が必要と言える。

■平田直氏
 「地震、地震動」などの「自然現象」と、「震災」などの「社会・経済現象」は区別して考えなければならない。なぜなら、「地震、地震動」は「ハザード」であり、人間が意図的に遅らせたり規模を小さくしたりできないのに対し、「震災」は「リスク」であり、しっかりと対策を行えば必ず軽減できるからである。 また、災害リスクを軽減するためには事前対策だけでなく、発災後の応急避難・復旧方法についても予め検討しておく必要がある。

■尾﨑正直氏
 国は平成24年に南海トラフ地震に関する被害想定を公表した。これを受けて、高知県でも独自に津波浸水予測を公表するなど、被害軽減を目指した対策を進めてきた。現在、第3期高知県南海トラフ地震対策行動計画に基づき、市町村と連携して、事前投資による被害軽減を目指し、住宅の耐震化や津波避難タワーの整備など命を守る対策、避難所の確保など助かった命をつなぐ対策、防災啓発冊子の全戸配布など地震に強い人づくりを行う対策など、ハード・ソフト一体となった対策を進めている。

■ロルフ・アルター氏
 リスクガバナンスを考えるにあたり、以下の3点について議論が必要
 ①シミュレーションやモデルなどの精度をどのくらい信頼すべきか
 ②行政側がどこまで責任を持ってリスクを負担できるのか
 ③様々な考えを持つ各主体をどのようにして連携させていくか

【今後の方向性】

本セッションでの議論をふまえ、下記の指針をとりまとめた。
「東日本大震災の教訓を踏まえ、日本では国難とされる南海トラフ巨大地震や首都直下地震などの、想定されうる最大規模の被害への減災・縮災対策や復興の検討を実施しています。これらの災害リスクを軽減するためには、政府による取組に加えて、国民一人ひとりが想定されている災害リスクを正しく理解し、自らの身は自分で守る「自助」、また、住民、地域コミュニティ、企業、行政機関等が一体となって、お互いに助け合う「共助」によって、社会の全構成員の参画による具体的行動を起こすことが重要です。」

タイトル:災害時のトイレの確保・管理
主催団体:内閣府(防災担当)

【スピーカーの主な発言】

 避難所は、災害発生後に自宅での生活が困難な被災者が生活する施設であるため、各家庭においても、携帯トイレ・簡易トイレ等の備蓄が大切です。避難所で生活しなければならない場合には、被災者の心理的ストレスの軽減だけでなく、健康を守ることにも繋がるため、トイレを安心して使用できるようにすることが重要です。

【来場者アンケートの結果】

シンポジウムの内容で、特に印象に残ったこと(アンケートより抜粋)

  • トイレも、公助、共助、自助であること。
  • 被災者の尊厳の為にトイレ対策が重要である。
  • 避難所運営をする中で、少しの工夫で使いやすい、衛生的なトイレにできること。
  • やっぱり一番大切なのが手指消毒だということ。
  • 学校のトイレの状況と実情をヒアリングして得られた内容が良かった。洋式の重要性、数より質がとても重要という話は非常に印象深かった。

ご意見ご要望ご感想など(アンケートより抜粋)

  • 今後も、災害用トイレに関するシンポジウム、セミナー等があると幸いです。
  • トイレは必ずいるものなので、そこでのトイレの管理方法などを学べて良かった。

タイトル:保険共済をはじめとした個人・企業の備え
主催団体:内閣府(防災担当)内閣府(事業推進担当)

【スピーカーの主な発言】

  • 保険で急場を凌げたという人も多いが、保険は数ある備えの中の1つでしかないということを忘れてはならない。まずは避難し命を守ることで保険も活きてくる。
  • 企業は防災対策に精力的に取り組んでいることを積極的に発信することが重要。
  • 誰もが地域や企業などのコミュニティに属していることから、そこでの取組が個人の意識や行動を変える場となるのではないか。
  • 保険は生活再建や、企業の設備が被災した際に支払われる商品が大半。現状、「事業継続のための保険」は少ない。近年はそのニーズが高まりつつあるのではないか。
  • 行政に助けてもらうというフェーズから、自分で備え、逆に国を守るというフェーズに変わってきている。その現状を理解した上で、個人個人が保険の必要性などをしっかりと考えていく必要がある。
  • 災害の種別によっては、被害を受けやすい生活環境・業種や、受けにくい生活環境・業種がある。それを知ることがスムーズな生活や仕事の再建につながる。
  • 防災に関連した情報は多く存在するにも関わらず、住民や企業がうまく活用することができていないことが課題と考える。
  • 行政が周知する情報は命に係わる最後の警告。予防の段階からどのような情報を入手し、備えるべきか各々が考えておくことが重要。
  • 企業は発災後を見据えて保険に加入しておくことと、発災時の被害を抑えるためのBCP作成が必要。
  • 防災を自分事とすることが重要。組織や地域全体から個人の備えを促すような仕組みが必要。
  • 防災対策に取り組んでいる企業にメリットを与える等の仕組みの構築が必要。

【今後の方向性】

  • 保険や情報など、個人の備えももちろん重要であるが、どのような災害の備えも企業や地域などのコミュニティを「場」として活用し、取り組んでいくことが重要。

タイトル:震災時のくらしに備えて「みんなで減災」(食料備蓄)
主催団体:みやぎ生協・日本生協連

【スピーカーの主な発言】

①パワーポイントを用いて、ローリングストック法(普段から少し多めに食材、加工品を買っておき、使ったら使った分だけ新しく買い足して いくことで、常に一定量の食料を家に備蓄する方法)を砂金理事が講演しました。(パワーポイント資料は印刷し当日参加者に配布。別添参照)

【講演骨子】

  • 東日本大震災の経験から学んだこと
  • 非常食の考え方
  • 家庭でできるローリングストック
  • 災害時の「非常食レシピ」

②上記講演内容の「非常食レシピ」に関連して、「乾燥ごぼうサラダ」と「乾燥切り干し大根サラダ」の試食も実施。参加者に実際に食べていただきました。

③会場後方では、ローリングストック商品の具体的内容を、「主食」「主菜」「副菜」「飲料」「その他」のカテゴリーに分けて展示。実際のイメージアップを図っていただきました。

【今後の方向性】

 各参加者は最後まで熱心に聞いてくださり、ローリングストック法についての理解は進んだと思います。

 みやぎ生協では、「震災時のくらしに備えて」と題してローリングストックに関するパンフレットも作成しています。同パンフレットの普及や今回のような講演会を今後も各所で開催し、ローリングストック法への理解と実践を広げ、いざという時の「減災」につなげていきたいと思います。

タイトル:衛星情報・地理情報と防災イノベーション
主催団体:日本学術会議 防災減災・災害復興に関する学術連携委員会、防災学術連携体

【スピーカーの主な発言】

■挨拶
 防災減災に関わる様々な研究成果や専門的な知見は、市民の皆様や実務担当者に正しく伝わり、防災の実践の場で活用していただかなければならない。わが国の防災技術を、より一層向上させ実効的なものにするためには、研究者や専門家による分かりやすく伝えるという努力が不可欠である。これが防災学術連携体の活動やシンポジウム開催の意義の一つである。今回もシンポジウムを通じて、紹介される新しい技術が防災の実践の場で活用されることを期待する。

■日本リモートセンシング学会

  • 防災分野への衛星リモートセンシングについては、従来、多くの課題があったものの解決されつつあり、災害時の情報収集に有用な手段となってきている。

■地理情報システム学会

  • UAV、3D、ウェブマッピングなどの技術の発展により地理空間情報が災害対応現場に実利用されるようになってきた。
  • 国土地理院の地理院地図をベースにした国土交通省の統合災害情報システムは、さまざまな現場からの画像や災害情報をGIS上に統合し、省内の情報共有、活動の指揮に用いられている。
  • 災害対策基本法の改正(平成24年)や仙台防災枠組2015-2030に謳われるなど、防災における地理空間情報の重要性が広まりつつある。

■日本地図学会

  • 位置情報が高精度でわかることは、土地勘がない人や地図を読むことが苦手な人の避難行動の助けになる。その一方で、高精度化された情報は「安心情報」化することで、逆効果を生む可能性もある。地図の作成や利用には、人間心理に配慮した記載が求められる。位置情報の高精度化を防災に結び付けるためには、十分な啓発が必要。

■日本気象学会

  • 日本における気象災害の犠牲者は、年間約100名と非常に多い。衛星観測は、温暖化/気候変動のモニタリングに使うことができる。衛星観測データの活用による気象予報精度の向上に貢献している。

■日本地球惑星科学連合

  • 衛星観測のメリットを生かした火山観測が最近さかんである。火山を、面的に、安全に、観測でき、あらかじめ機器を設置しておく必要がない。防災の視点でも活用が進み、近年の技術進歩によってさらに重要なアイテムになりつつある。さらに時空間高分解能、多機能な衛星に期待する。

■日本地すべり学会

  • 衛星/空中写真画像・数値地形データと地理情報システム(GIS)を用いた斜面災害軽減として、下記の3つの効果が期待できる
    ①国を越えて共有できる衛星情報を用いた災害対応支援
    ②さまざまな地理情報の分析(現地調査も含め)による災害(危険度)予測の有効性
    ③ランドスライド災害データベースの必要性

■日本集団災害医学会

  • 各分野での衛星情報・地理情報に関する研究が進む現在、災害医療分野もこれを利活用してさらなる発展が望まれる。医療は災害現場では孤立しがちであり、相互の情報共有によりこれを改善したい。SIPの取り組みに代表される他分野のイノベーションを最大限有効に利活用すべく、今後も医療分野自身が発展できるよう、さらなる研究が必要。

【今後の方向性】

今回のセッションで発表された、最新の情報や経験をより広く共有し、この中からアクションアイテムを作って継続して、議論を深めていくことが重要である。今回のセッションはその第一歩となった。

 

11月27日(月)

タイトル:会社が安心で地域も安心~災害に負けない中小企業で地域を元気に!~
主催団体:MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社

【スピーカーの主な発言】

1.BCP策定の重要性と取組み事例
■中小企業庁
中小企業におけるBCPの策定率は15%程度。多くの中小企業がBCPの必要性を認識しているものの、スキル・ノウハウ不足、人手不足、経費上の問題等の様々な要因により、策定に至っていない。中小企業庁で提供しているBCP策定支援取り組みを紹介。

■仙台商工会議所
東日本大震災後の仙台商工会議所の取り組み、全国商工会議所の共済制度・BCP策定支援セミナー等を紹介。

2.BCP策定の実態
■インターリスク総研
宮城県内中小企業のBCP認知・策定状況の説明。策定のメリット・阻害要因を整理し、パネルディスカッションへの論点を整理する。

3.パネルディスカッション「BCPで災害に負けない企業をつくる」
■オイルプラントナトリ
自然災害や危機的事故が発生しても事業が継続できるシステムを策定しておくことで、従業員を守り・地域を守るスタンスを基本にしている。「何のためにやるのか」を明確にすることが重要。策定に当たっては宮城県の「出前講座」を活用した。完璧なマニュアルを最初から策定しようと思わず、取引先等の連絡先をリスト化する事からスタートし、気になったことを追加してスパイラルアップしていくのがよい。企業に合ったBCPを策定し経営者・従業員相互の理解と認識を深め、役に立つ事業継続計画にしてほしい。

■白謙蒲鉾店
繰り返し全従業員で訓練・教育を実施。従業員・パート社員に定期的にアンケートを実施し改善案を吸い上げている。社員の安全を確保するための「初動を極める」が全従業員に浸透し、役員不在でも自発的な行動が可能に。取引先にも浸透し、台風時の問合せも激減した。社員の採用時にも「安全な会社」として評価されていることを感じる。取引先との日頃の関係づくりにより、震災時に他社や異業種の紹介で早期の復旧が可能となった。

■宮城県
「みやぎモデル」を策定し普及セミナーを数多く実施。レベル別に3つのモデルを準備。モデル1は30分程度で整理できる内容とし、まず取り掛かることを重視。「オールハザード」を前提に、「どうやるか」ではなく「何をやるか」を明確にすることを推奨。想定外のことが起きた場合にも対応できる「対策の引き出し」を増やすことを伝えている。

【今後の方向性】

  • BCP策定は難しくない。できるところから取り掛かることが重要。
  • ノウハウは県のセミナー等で提供しているものを活用できる。
  • 「何のためにやるのか」という魂の部分を確認し、全従業員で共有する。
  • 「災害が起きたときのため」だけでは限界があるので、災害時の対策を平常時にも活用できるようにする。
  • BCPの策定が企業価値の向上につながっている事例も見られる。平時でも、BCPを策定していることが企業の「強み」となり、災害時にはいち早い復旧で従業員を守ることができる。
  • 中小企業のBCP策定率は高くないが、まずその一歩を進めるための案内となった。